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光秀=天海説、血液型と宗教、江戸の怪異に神木巡り……/ムー民のためのブックガイド

「ムー」本誌の隠れ人気記事、ブックインフォメーションをウェブで公開。編集部が選定した新刊書籍情報をお届けします。

文=星野太朗

『明智光秀は天海上人だった! 「本能寺の変」後の驚愕の真実』大野富次 著

本能寺の変の真相に迫り、光秀生存説を裏づける
「本能寺の変」といえば、日本史上最大の陰謀といっても過言ではない一大事件である。天正10(1582年)年6月2日未明、中国地方征伐支援のために出陣を命じられていた織田信長の重臣・明智光秀が、突如として叛旗を翻し、「敵は本能寺にあり」という名台詞とともに(実際には後世の脚色ともいわれる)、信長が宿泊していた京都は本能寺を急襲した。信長は果敢に応戦するも多勢に無勢、最終的には寺に火を放って自害する。
 その後、一般的な史実によれば光秀は羽柴秀吉による予想外の反撃を受け、山城山崎の戦いで敗北。逃走途中、京都は小栗栖で落ち武者狩りに殺されたことになっている。信長打倒からわずか13日。世にいう「光秀の三日天下」である。
 その後の日本史の転換点ともなったといえる大事件だが、その重要度のわりに、この事件の全容はあまりにも多くの謎に包まれている。もともと光秀は「故実・典礼に通じ、民政にすぐれ、茶湯・連歌を好む理性的で教養豊かな武将」とされる啓明的な人物。信長の信任も厚く、丹波一国を領する大名に取り立てられるなど、多大な恩義を負っている。
 そんな彼がなぜ唐突に主君弑逆(しいぎゃく)の暴挙に出たのか。そしてそもそも、光秀は本当に小栗栖で死んだのか。そのような数多の疑問を土壌として、光秀は実際には死んでいないとする伝説の数々が、古くは江戸時代から連綿と語り継がれてきた。
 本書は、膨大な歴史資料を読み解いて本能寺の変の真相に迫り、光秀生存説を裏づける研究である。著者によれば、光秀謀反の動機は、冷酷無残な信長が「天下を掌握すれば、暗黒の世を迎えると危惧」したことにある。その信長に徳川家康暗殺を命じられた光秀は、逆に家康と通じ、相呼応して信長誅殺を謀ることとなった。すなわち、本能寺の変の黒幕は家康だというのである。その後、実は生き延びていた光秀が、天海僧正として家康に仕えることとなる顚末が説得力豊かに展開される。
 文体は正直、あまり読みやすいものとはいい難いし、また戦国時代の歴史や武将に関するある程度の知識なしには論旨を追うだけでも苦労するかもしれない。だが、その苦労は必ず報われるだろう。本文の活字はかなり大きめで、非常に見やすい点はありがたい。


『百目鬼の謎 「目」のつく地名の古代史』藤井耕一郎 著

日本の古代史を「地名」という鍵を用いて解明
「魏志倭人伝」に報告される邪馬台国の女王・卑弥呼の名はだれもが知っている。卑弥呼が魏に遣使したのは239年。だが、その100年以上前の107年に、卑弥呼のじつに16倍もの規模で後漢に朝貢した倭国の王・帥升(すいしょう)の名はあまり知られているとはいいがたい。歴史の教科書でも、「九州北部の小国の連合体の王に過ぎなかった」と記されているほどだ。
 その後、3世紀半ばから5世紀初頭にかけて、中国の歴史書に倭国の名がまったく登場しない「空白の4世紀」と呼ばれる期間があり、いわゆる大和朝廷はこの空白期間中に成立したらしい。この「文字記録がほとんど存在しない」という事実が、日本の古代史をさらに謎めいた、ロマン溢れるものに仕立てあげている。
 本書は、そんな謎に満ちた時代の秘史を、「地名」という鍵を用いて解明しようとする異色の試みである。特に標題にもある「百目鬼(どうめき)」をはじめとする「目」のつく地名は、その場所が「人々の記憶に残されるような呪術の拠点」であり、「国家が誕生した様子をあぶり出す手がかりに使える」という。
 全編を通じてじつに読ませる文体で、ぐいぐいと惹き込まれる。掛け値なしに最高の知的エンターテインメントである。著者が理路整然と推理する帥升の正体、そして最後に明らかにされる「高天原」の位置のピンポイントの特定には、思わず変な声が出てしまった。まさに古代史マニアにとっては必読の名著である。


「願いをかなえる〈神さま貯金〉」真印 著

幸せになりたいすべての人にオススメの一冊
 本書の著者である真印氏は、奇しくも本誌月刊「ムー」第470号で「四国の神さま」として紹介されている、奈良時代から続く霊能者一族の末裔である。詳しくは同記事をご覧いただきたいが、著者はスピリチュアル・カウンセラーとして、これまでに10万人以上の人を幸せに導いてきた。本書は、そんな著者が「神さまを味方につけ」「願いをかなえる」ための、だれにでもできる簡単な方法を惜しげもなく公開している。
 あの記事を読んで著者に興味を抱いた読者なら、もうこれだけで文句なしに「買い」である。
 著者のいう「神さま貯金」のコツは、ズバリ「自分の中を『ご機嫌』で満たす」「人の役に立つことをする」「やることをやったら、後は神さまにお任せする」の3項目。この3つのコツを軸として、本書にはどのページ、どの項目を見ても、現在の生き方をよりよくし、神さまとつながるための具体的なヒントが満載されている。
 さて、本書でいう「神さま」とは、幾度も輪廻転生を繰り返して人生のステージを上げ、ついに天上界にのぼった魂のこと。元来は人間であった存在なので、後輩の魂であるわれわれを喜んで応援してくれるし、われわれの幸福を願ってくれてもいるというのだ。
 読者に直接語りかけるような親しみやすい文体で、どなたでもすらすら読める。幸せになりたいすべての人に自信をもってお奨めできる素敵な本である。


「血液型と宗教」前川輝光 著

まったく新しい視点から世界の宗教史を読み解く
 一般に「血液型性格診断」といえば、正統派の心理学会からは「疑似科学」扱いされ、正当な学問とは認められていないというのが現状で、場合によっては通俗的な占いと同例に扱われることすらある。
 このような風潮に対し、本書の著者はまず、「血液型が気質・行動性をある程度決定していることは、統計学的に文句なく証明されて」おり、「血液型と性格」の「関係の存在証明」はすでに終わっている、と断言する。
 かくいう著者・前川輝光氏は宗教学、インド宗教・文化論を専門とする宗教学者であり、仏教研究の最高峰ともいうべき中村元賞を受賞した碩学である。その碩学が「今考え得る限りのことを、後世のたたき台としてまとめておく」という真摯な志と学問的良心を以て、じつに5年以上もの歳月を費やして書きあげた彫心鏤骨の研究書が本書である。これは余計な常識や先入観を棄て、居住まいを正して謹聴せざるを得ない。
 内容は、これまで等閑にされてきた「血液型と宗教の関連の問題について体系的に検討した最初の試み」だ。具体的には、世界宗教史上の諸宗教について、6つのタイプを措定した上で、世界各地の血液型分布率データにもとづき、それらのタイプと血液型との関係が緻密に分析されている。まったく新しい視点から世界の宗教史を読み解く斬新な研究でありながら、正統的な宗教史の教科書としても読むことができる、まさに畏るべき著作といわねばなるまい。


「神聖幾何学とカタカムナ マワリテメグル世界がわかる・見える!」秋山佳胤・吉野信子 著

宇宙の深層構造の根源に迫る深遠玄妙な対話
 本書の著者のひとりである秋山佳胤氏は、東工大の理学部を卒業後に畑違いの弁護士となった人物で、また医学博士号も取得している。「不食の弁護士」として巷間広く知られており、生命エネルギー「プラーナ」を直接摂取することで、長年にわたって水も食べ物も摂らずに生活しているという驚異的な人物だ。
 もうひとりの著者・吉野信子氏は、「カタカムナ言霊伝道師」として、太古の日本に実在したという「カタカムナ文明」の研究に打ち込み、「カタカムナ学校」の校長をも務めている。
 本書全体の半分近くを占める第一章は著者ふたりによる対談。カタカムナと神聖幾何学をとっかかりとして、宇宙の深層構造の根源に迫る深遠玄妙な対話が繰り広げられる。
 第二章は秋山氏の制作による、綿棒などを用いた神聖幾何学作品の紹介。美しいカラー写真による作例の数々は、「見るだけで元気になる」と銘打たれている。
 第三章は秋山氏による神聖幾何学概論。それによると「形態というのは物質ではなく、見えないその形が実はエネルギーを生み出している」。前章で紹介された作品の意味がここで解き明かされ、またそれらを自分の手で実際に制作することが一種の霊的修行となることが示される。
 第四章は吉野氏によよる「カタカムナウタヒ」の解説だ。10首の歌にもとづいて宇宙創造の秘義が解き明かされる様は、まさに圧巻のひと言である。


「江戸の怪異と魔界を探る」水野大樹 著 飯倉義之 監

江戸の怨霊、妖怪、幽霊、魔界に関する伝承の集大成
 徳川家康が拠点を構える以前には、ほとんどが未開の地だったとされる江戸。この地を開幕の地として策定したのは、家康から家光までの3代にわたって徳川家のブレーンとして活躍した僧・天海であったとされる。
 本書は、この天海が綿密な仕掛けを施した風水都市・江戸の各地に息づいていた怨霊、妖怪、幽霊、魔界に関する伝承を集大成したガイドブック。見慣れた東京の街並みも、一皮剥けばその表層下には底さえ知れぬ闇の領域が拡がっている。本書を一読すれば、この魔界都市のそこかしこに、今なお名状しがたい怪異や魔物が生々しく蠢(うごめ)いていることがまざまざと実感できるだろう。
 監修を務める飯倉善之氏は國學院大學文学部准教授で、専門は民俗学・伝承文学。怪異・怪談、妖怪伝承に造詣の深い新進気鋭の学者で、「研究室は全国で集めた妖怪グッズで溢れている」というお人柄である。そんな学識深い怪異マニアが心を込めて監修した本が面白くなかろうはずがない。蟄居(ちっきょ)して読むだけでも十分楽しい本に仕上がっている。
 だが何といっても本書の醍醐味は、これを片手に「怪異の現場を辿り、歴史を散策」し、「江戸の人々が遭遇した怪異に想いを馳せながら実際に歩いてみる」ことにある。残念ながら、昨今はこのようなちょっとした街歩きすら、なかなかままならぬ情勢ではあるが、1日も早く、存分に散歩を楽しめる世の中に戻れることを祈念しつつ、本書を推す。


「神木探偵 神宿る木の秘密」本田不二雄 著

69柱の神木を、迫力満点の写真とともに紹介
 この国にはたくさんの「ヌシ」がいる――何とも唆そそるキャッチコピーである。そのヌシとは、何を隠そう樹齢何百年、何千年を誇る巨木たちだ。日本では、これらの巨木の多くが「神木」として祀られ、信仰の対象となってきた。
 普段あまり意識しないかもしれないが、これら神木の膨大な樹齢を人間の時間と比較すれば、目も眩むような感覚に襲われる。数えきれぬほどの世代が移ろい、数多の文明が興亡したその長い年月を、これら神木は単一の生命体として生き延び、そして今も生きつづけている。
 ある意味で究極の生命ともいうべき存在であり、しかもその姿はまさしく異形。古来の日本人がその勇姿に神を見いだし、崇めつづけてきたのも当然といえる。本書は、日本各地に点在するこれら神木を69柱、迫力満点の荘厳な写真とともに詳細に紹介した労作。
 著者の本田不二雄氏は、一般向け宗教書を得意分野とするノンフィクションライター兼編集者。確か以前はどこかで「日本で唯一の神仏探偵」を名乗っているが、今回は神仏ならぬ「神木探偵」として堂々のご登場である。達意の文章はもとより、すばらしい写真の数々も著者自身の手になるものというから舌を巻く。
 国内旅行もはばかられる状況にある昨今、本書を通じて自宅に居ながらにして全国各地の神木たちとの絆を結べることは、自粛者にとってこのうえない福音である。乞御愛読。


(ムー2020年7月号掲載)


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