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安倍晴明から珍奇植物まで! ムー民のためのブックガイド

「ムー」本誌の隠れ人気記事、ブックインフォメーションをウェブで公開。編集部が選定した新刊書籍情報をお届けします。

文=星野太朗

「安倍晴明 -陰陽師従四位下」中村友紀 著

安倍晴明および陰陽道に関するきわめて上質な入門書
 安倍晴明。本誌の読者にとっては、今さら改めてご紹介するまでもない、平安時代の大陰陽師である。
 晴明は死後およそ100年を経たころから、主として仏教説話においてその超人ぶりが称えられるようになり、人間離れした超常的な力を発揮する人物とのイメージが定着した。鎌倉から江戸と時代が下るにつれ彼の超人度は加速度的に高まっていく。明治から昭和にかけては講談や小説の主人公として人気を集め、さらに昭和63年に発表された夢枕獏の小説『陰陽師』がひとつの契機となって生み出された晴明ブームは、令和の現代に至るまで連綿と続いている。その間、晴明その人のイメージも「妖怪じみたムードさえある異形の大長老」というものから「ずんぐりむっくりとした体型に厳しい顔つきの中年男性」、そして「すらりと背が高く、色白の美男子で年齢不詳」まで、じつにさまざまなものが世に流布してきた。
 本書は、丹念な資料の読み込みに基づいて、虚像と実像が入り混じった謎の人物・安倍晴明の実像に迫り、さらには日本における陰陽道の歴史を俯瞰しようとする野心的な試みだ。
 第1章「表の晴明」では、歴史文献に記録された、「陰陽寮」という役所に勤める役人としての晴明が紹介される。一般的なイメージよりも遙かに地味な存在だ。一方、第2章「裏の晴明」では、後の説話に登場する晴明が描かれる。われわれのよく知る晴明の原像ともいえるものだ。続く第3、第4章は晴明からはいったん離れて、そもそも陰陽道、およびその呪術とはいかなるものかが解き明かされる。第5章は再び晴明に戻り、「現代に生きる晴明」と題して、晴明ゆかりの地を巡る。そして終章「風水と結界」では、現在定着している「晴明が都に結界を張った」とする観念のルーツを探り、これを覆す説得力ある証拠を提示する。
 著者は1980年代にニューエイジ運動、精神世界を専門とするプロダクションに所属、以後さまざまなミステリーやオカルト関係の雑誌、書籍に企画・編集・執筆者として携わってきたというから、すでにこの道40年近い大ベテランである。その長年に亘る膨大な人脈のなかには、「結界張りを得意とするという陰陽師」までいるというから恐れ入る。文体は滋味溢れ、語り口はあくまで丁寧で、著者の誠実な人柄が伝わってくるかのような爽快感がある。安倍晴明および陰陽道に関するきわめて上質な入門書である。


「せめて死を理解してから死ね! ~孤独死のススメ~」保江邦夫 著

死のプロセスを正しく迎え、その先にあるものとは?
 ノートルダム清心女子大学名誉教授にして、日本を代表する理論物理学者である保江邦夫氏が、「死」をテーマに縦横に語りつくした快著である。著者は、ノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士がかつて提唱した空間の超微細構造を規定する物理学である「素領域理論」に基づき、「あの世」の構造を解き明かした人物として知られる。また、スペイン人修道士エスタニスラウ神父より伝授された「キリスト活人術」を初めとするさまざまな霊的修行を経て、この世とあの世の実相を知りつくした人物でもある。
 そんな著者によれば、孤独死とは避けるべきものでもなくすべきものでもない。むしろ人はひとりで死んでいくことこそが正常なのだという。ひとりで孤独に死ぬことにより、人はだれにも邪魔されず、死というプロセスを全うできるというのだ。
 では、だれもが必ず体験することになる死のプロセスを正しく迎える方法とは、そしてその先にあるものとは。そうした当然の疑問に、本書はじつに明確な答えを用意している。本書に説かれる「天国へ行く方法」を練習すれば、もはや死は恐れるべきものではない、むしろ待ち遠しくさえ思えるようになるだろう。
 巻末には綴じ込み付録として、宇宙の根源である「ダークマター」と繋がる秘儀までが明かされている。この部分を読むためには、必ず本書を購入せねばならないが、その価値は十分にある。


「豊璋 藤原鎌足の正体」関裕二 著

歴史上きわめて影の薄いこの人物を徹底的に追求
 藤原鎌足といえば、いわずと知れた大化改新の功臣であり、蘇我入鹿の暗殺者にして、「古代最大の英雄」と目されている。日本史上最大の貴族である「藤原氏」の祖でもあり、その末裔は近代に入ってもなお隠然たる権力を保持している。
 だがこの藤原鎌足、実は相当に出自の怪しい人物でもある。あの『日本書紀』にすら、鎌足の出自は明記されていない。つまり彼はまったく唐突に歴史の中に「湧いて出た」のだ。
 今から30年以上前にこの点に疑問を抱いた著者がぶち当たった人物、それが百済(くだら)最後の王である義慈(ぎじ)王の王子、扶余豊璋(ふよほうしょう)であった。
 豊璋は631年、義慈王に命じられ、人質として来日した。歴史上きわめて影の薄いこの人物を徹底的に追求し、さまざまな資料を突き合わせて検証した結果、著者はこの豊璋こそが藤原鎌足の正体である、という結論を下すに至る。
 由々しき事態である。何しろこの豊璋、その「ずる賢さ、生き残る執念、残虐で卑劣な手口」で特筆される人物であり、彼のそのような資質はその後、そのまま遺伝子のように藤原氏に引き継がれた。そして藤原氏は「王家を傀儡にするだけではなく、日本を食い物にし、藤原氏だけに富が集まるシステムを構築していった」というのだ。
 正直、読みこなすには相当豊富な日本史の知識が必要とされるが、苦労して取り組む価値は十分にある秀逸な歴史ミステリーだ。


「あなたの願いを叶える 神社ご利益大全」本田不二雄 著

代表的な神社百社を厳選したパワースポット巡りの友
 昨今は「パワースポット」がブームとやらで、霊的な聖地巡りを趣味とする人も増えていると聞く。なかでも人気のあるのは、やはり日本人の民族宗教である「神道」の神社であろう。著者によれば神社とは、「日常とは異なる、古くからの歴史や祈りの伝統が集積してできた非日常の場」。その神社を詣でることは、日常を離れ、普段とは違う心のモードになることにほかならないという。
 本書は、全国の代表的な神社百社を厳選、「縁結び」「金運」「勝負運」「諸願成就」のテーマ別に、豊富な写真とともに各社の主祭神から参拝方法までをコンパクトに紹介したもの。
「ご神縁を結ぶ」というコンセプトの下、今訪ねるべき神社がすぐ解る素敵な旅のガイドブックになっている。パワースポット巡りの友として、これ以上のものはない。
 著者は神社や仏像など、日本の神仏世界の魅力を伝える書籍・雑誌の編集制作に長年従事してきたノンフィクションライターで、近年は日本で唯一の「神仏探偵」として、出版に留まらず多方面で活躍中であるという。
 全国津々浦々の百か所にも上る神社をみずからの足で踏破し、取材、調査から撮影までをひとりで丁寧にこなした上で一冊の本にまとめ上げるとなると、その労力たるや計り知れないものがあるだろう。普段から神仏探偵として全国各地を駆け巡り、取材と情報蓄積に専念してきた著者にしかなし得ぬ偉業である。


「実践 チャクラヒーリング」ジェニー・ハーディング 著

チャクラを使いこなすためのあらゆる情報を網羅
 チャクラとは、元来はサンスクリット語で「車輪」を意味する言葉。神秘学用語としては、「人間の身体に存在し、活力を与える生命エネルギーの表れ」をいう。人体には脊柱に沿って7つのエネルギーセンター、すなわちチャクラが展開しており、それが車輪のように回転している。このチャクラを活性化させることで、エネルギーのレベルを高め、日常生活の改善に活かすことができるのだ。本書は各チャクラに働きかけるためのヨガのポーズから、チャクラ別の瞑想の仕方、チャクラ活性化に有効な道具まで、チャクラを使いこなすためのあらゆる情報を網羅している。
 著者ハーディングはヒーラーとして25年以上に及ぶキャリアを持ち、クリスタルヒーリング、クリスタルエネルギーレメディなど、さまざまなヒーリングを実践している人物。そのためか、高度に専門的な内容を含んでいるにもかかわらず、もともと実用的であり、どのページを開いても、今すぐ実践できるテクニックが満載。思わず目移りしてしまいそうになる。
 また、ほぼ全ページにカラーの美しい写真が挿入されているのも本書の魅力。なかにはファッション雑誌から抜き出してきたのかと思うようなお洒落な写真もあれば、見る者を瞑想に誘うようなサブリミナル風の写真もあり、眺めているだけでもインスピレーションが湧出する。女性の書架に置いても存分に映える美しい書物に仕上がっている。


「歴史人物怪異談事典」朝里樹 著

日本史上に登場する怪異談を集めた浩瀚な人名事典
 三十六歌仙のひとりで絶世の美女とされる平安時代の小野小町。伝承によれば彼女は死後、眼窩から薄の生えた髑髏となり、物悲しげな歌で道行く人に呼びかけたという。また、鎌倉幕府を開いたことで知られる初代将軍源頼朝。彼の死因は落馬とされているが、『北条九代記』によれば、このとき、馬に乗っていた頼朝の前に、壇ノ浦の戦いで海に消えた安徳天皇の亡霊が現れ、これを見た頼朝が恐怖のあまり気を失ったのが、落馬の原因だという。
 ことほどさように、日本史に名を残す人々には、とかく怪異にまつわる話が多い。「古代では怪異は人々の身近にあり、中世には人間同士の戦いに敗れた者が怨霊となり、近世以降、怪異談は人々を楽しませる娯楽となり、近代では人間社会を考察する方法のひとつとして怪異談が研究されるようになった」と著者はいう。すなわち「日本人の歴史と怪異談は、切っても切れないもの」なのだ。
 だが当然ながら、そのような話は歴史の教科書を見ても出てこない。そこで本書である。本書は、弥生時代以前から昭和時代まで、およそ日本史上に登場するあらゆる怪異談を集めた浩こう瀚かんな人名事典である。取り上げられる歴史的人物は、じつに500名以上。内容自体も凄まじいが、目的別に5種類もの索引を付すなど、実用性の上からも便利この上ない。日本史愛好家、怪異ファンなら必携の、まさに待望、垂すい涎ぜんの事典の登場である。


「珍奇植物 生態入門」木谷美咲 著

世にも恐ろしい植物を、異様な迫力に満ちた写真で紹介
 著者によれば、植物は「邪悪」であり、「この世は植物に牛耳られていると言っても過言ではない」。
 そんな世にも恐ろしい植物を、著者は「化けて騙す」「危険すぎる」「すごい匂い」「奇行に走る」といった独自の観点から分類し、名状しがたいほどの無気味で異様な迫力に満ちた写真とともに紹介する。じつに強烈な魅力に満ち溢れた本である。
 その写真というのが、奇天烈珍奇であると同時に、もう蠱惑(こわく)的というか淫靡(いんび)というか妖よう婉えんというか、ともかく「名状しがたい」としかいいようのないものばかりなのだ。なかには同じ地球上に現存する生命体とすら思えぬものまで散見される。
 各写真に添えられた著者によるキャッチコピーもまたいちいち凄い。
「死の匂いを放ち、花粉媒介者を誘惑する砂漠の星」「禍々しさと機能性とを、兼ね備える悪魔の所業」「力尽き、息絶えたトンボの体から、あふれる生命の漲みなぎり」。これが植物写真のキャプションだというのだからもう呆れ返るほかはない。凄まじいまでの植物愛、凄まじいまでの迫力である。
 巻末付録のエッセイと現地ルポもまた、本文とは異なる魅力を放っていて秀逸。
 内容に比して価格が異常に安いと思えるのは書籍ではなく、ムック本という体裁の賜物か。四の五のいわずに書架に常備し、時折思い出したように取り出して酒でも呑みながら眺めてみるのもまた一興。異世界への扉がそこにある。

(ムー2020年2月号掲載)


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