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「火葬島」上陸と現代日本の墓事情/吉田悠軌・オカルト探偵

いわくつきの遺体だけが運ばれ、焼かれる島がある――。そんな噂の真相を探っていくと、そこには意外な事実と、「お墓」をめぐる多様な社会事情が浮かび上がってきた。

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吉田悠軌(よしだゆうき)/怪談サークル「とうもろこしの会」会長、『怪処』編集長。今月の写真は横辺島にて、火葬の痕跡と思われる黒い岩肌とのツーショット。

すすけた岩壁が迎える瀬戸内海の「火葬島」

 笠岡(かさおか)の港から、約束していた釣り船に乗り込む。小ぶりな船だが、瀬戸内海の穏やかな波では自動車ほどの揺れしか感じられない。15分もすると、白っぽい岩の塊が見えてきた。昔のマンガに出てくるような無人島のイメージそのままだ。

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釣り船に乗せてもらい、縦島と横辺島を目指す。両島とも現在は釣り客が訪れることが多いそうだ。

「あれが〝タテ〞だよ」と船長が教えてくれた。
 岡山県に属する笠岡諸島には30以上もの島が連なり、そのうち7つに人が住んでいる。そこに点在する無人島の中には、日本でここだけの「火葬するためだけの島」があるらしいのだ。

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瀬戸内海の笠岡諸島に浮かぶ、火葬のための島。縦島はすぐに一周できるほど小さな、岩だらけの無人島である。遠目には穏やかな風貌だが、「火葬島」と聞けばどこかおどろおどろしさも感じてしまう……。

――それは縦島と横辺(よこべ)島、通称〝タテ〞〝ヨコ〞と呼ばれる2島で、コレラなど疫病で死んだ者、身寄りのない者たちの遺体を運び、荼毘(だび)に付していたという。
 その煤が有人島に届かないよう、当日の風向きによってタテ・ヨコどちらに上陸するかを選ぶ。そして火葬後の灰は野ざらしで波にさらわれるままにしておいた。その風習は、平成の時代まで続いていたともいう……。

 インターネットの一部で禍々しい因習として語られる「火葬島」。その真相を探るため、私は瀬戸内海中部の先に繰り出した。船はまず、縦島からせり出した岩に舳先を接岸した。よくここに釣り客を送迎しているらしく、手慣れたものだ。

「俺は笠岡の人間なのでよく知らないね。ここで火葬してたってのも全部、釣りのお客さんから聞いた話だよ」

 もちろん足場も確保されていないので、滑らないよう注意しつつ上陸する。岩山の頂上にはぽつんと松の木が生えており、私が近づいたとたん、そこから鷲のつがいが飛び立った。島を周る途中、人工的に平たくされたようなポイントを見つける。おそらく、ここに木枠を組んで火葬していたんだな……。
 そう思いつつ視線を上げると、黒いしみが岩の表面にこびりついている。明らかに自然石の色ではなく、脂と煤によってつけられた「黒」。とっさに連想したのは、空襲で人々が焼けた浅草・言問橋の欄干に残された、あの「黒」い燃え跡だった。そのまま一時間ほど佇んでいると、船長が迎えにきてくれた。

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縦島の平たい足場の上部には、明らかに煤の跡が残っている。

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「火葬場」はちょうどよく平坦になっている。火葬の壇を組みやすくするため、北木島の石切職人たちが岩を削ったのかもしれない。

「ヨコのほうは、風吹いてて波が高ければ、接岸できないよ」

 横辺島に向かう途中、船長からの注意があった。穏やかな天気の瀬戸内海でそんなことがあるのか、とも感じたが、島の様子が見えてきてよくわかった。縦島よりもさらに岩場が急峻なのだ。上陸して様子を探ったが、なんとか一周できた縦島とは違い、半分ほどしか歩いて周れなかった。またここでは、はっきりとした火葬跡も確認しづらかったので、縦島に比べると使用頻度が低かったのではないだろうか。
 ちなみに「ヨコの海には供養のための墓石が転がっている」との噂もあるが、いくら水中に目を凝らしても、それらしきものを発見することはできなかった。

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横辺島(よこべじま)にも岩肌が煤らしきもので変色していた。やはり火葬の痕跡だと思われる。

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横辺島の海には、墓石がそのまま奉納され沈んでいるとの噂もあるが……それらしきものは発見できず。

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縦島よりも岩場が急峻なため、人が歩ける箇所は少ない。とはいえ干潮時には足場も広がるはずで、もしかしたら墓石が見えるかもしれない……。

 しかしいったい、なぜここに「火葬島」があったのだろうか?

 縦島・横辺島を後にした私は、その風習を行っていた人々に話を聞こうと、笠岡諸島最大の北木(きたぎ)島に向かった。これまで自分が取材した、各地の「特殊な葬儀と墓」を思いだしながら……。

伏せられた木地師たちの墓

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