見出し画像

UFO墜落現場を結ぶヴォルテックス・ラインと異邦人アサナジの謎/保江邦夫・UFO墜落現場探検記(1)

湯川秀樹博士の最後の弟子にして武道家、そして伯家神道の祝之神事(はふりのしんじ)を授かったという異能の物理学者・保江邦夫氏は、もうひとつ「UFO研究家」の顔を持つ。20余年前に材質に関する研究報告の専門誌「バウンダリー」(コンパス社)に連載されていた「UFO調査」がここに復活!

文=保江邦夫

第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回

前回までのあらすじ

 1994年4月アリゾナ州セドナで開かれた国際会議での出会いをきっかけに、筆者一行はネバダ州ラスベガスの近くにあるブルー・ダイヤモンド・ヴォルテックスを訪れ、山腹に正体不明の巨大な2つのトンネルを発見する。調査は断念したものの、現地の保安官からの情報を頼りにアラモという村へ向かった。そこでも謎の発光編隊を目撃し、謎の軍用車に追われたことで、筆者一行は、この場所とUFOや異星人とのかかわりを確信する。
 次に向かったレイチェルの「エリア51リサーチセンター」から、筆者一行はついに”フリーダム・リッジ”の丘を登り、頂上から「基地」を目撃する。その山の向こうには、はるか昔からアメリカインディアン達がアナサジと呼んでいた種族が作り上げた地下施設があり、そこからUFOらしき物体が飛び立っていたという。秘密基地の真実は、ナバホ族やホピ族が知っているというが……。

再びキングマンへ

 アラモの村で給油をすませた我々のタウンカーは、緩やかな下りの93号線を一路ラスベガスへとひた走っていきました。心ここにあらずといった雰囲気で押し黙り運転している私を心配し、マリーやスコットが代わる代わる声をかけてきます。
「ねえ先生。やっぱり、変よ。さっきの店で何かあったの?」
「そうだぜ、クニオ。さっきの爺さんと、いったい何を話していたんだ?」
 何とか自分を取り戻した私は、ゆっくりと口を開き、ガス・ステーションでお爺さんから聞いた話を2人にも聞かせることにしました。

「いや、すまない。隠すつもりはなかったんだが、あのガス・ステーションのお年寄りに聞いた話があまりにショックで、自分の気持ちを整理するのに精一杯だったんだ。あの誠実そのものといった雰囲気のお爺さんを見ただろう? あのお爺さんがこんな話をしてくれたんだ。
 このアメリカにはインディアン達より先に住み着いていた種族がいた。UFOはその種族が操っている乗り物で、ナバホ・インディアンの言葉では異邦人を意味するアナサジと呼ばれているのがその種族の名前だ。あのお爺さんの父親は牧場をやっていたが、頻繁にUFOを目撃していたという。まだ飛行機が発明される前の時代だよ。当時あの辺りの人々はあの山の向こうに飛んでいっていたものをスパニッシュ・シップと呼んで、インディアンから聞いた異邦人をスペイン人のことと誤解していたようなんだ。
 それが、1910年代になって、あの山の向こうに急に陸軍の基地が作られ、そこに牛乳を配達するため、あのお爺さんも小さな子供の頃に基地の中に入っていったこともあるそうだ。一度だけチャンスがあって、基地の中にあるアナサジが作った不気味なトンネルの中にちょっとだけ入れてもらったことがあったそうさ。奥の方には、何かものすごいものがたくさんあるとほのめかされたんだが、実際にはトンネルの入り口近くの金属の壁を触らせてもらっただけらしい。それでも、その金属壁だけでも驚愕に値する不思議な性質を持っていたらしくて、今で言う形状記憶合金みたいだが、その表面は金属というよりも爬虫類の皮膚に似ていたそうだ」

 内容だけ聞いていると随分と奇想天外な話です。しかしこの2日間の冒険と、私の口調や雰囲気があまりにも真剣そのものだったため、スコットもマリーも驚きながら素直に耳を傾けてくれていました。
「アメリカ大陸は、彼らの土地だったのか! タブロイド紙などでは、UFOに乗ってアメリカ上空を飛んでいるのは宇宙からの侵略者だなどと言われているけど、コロンブスの発見を契機に、ヨーロッパから移住していった僕らの祖先のほうが侵略者だったのか!」
「それに気づいたアメリカ政府は、あの山の向こうにあった先住民の地下施設を占拠して、彼らのことを調べ上げたか、あるいは上手に近づいていって利用しているのか、いずれにしても完全に秘密裏に接触してきたわけね。でも、アメリカインディアン達は知っていたわけなのに、どうして言い伝えていないのかしら?」
「いや、やっぱりインディアン達が鍵になるらしい。さっきのお年寄りも言っていたが、ナバホ族やホピ族のインディアンにはちゃんとアナサジ伝説が残っているらしいんだよ。もちろん、今ではインディアンの種族に見られた原始的な宗教神話にすぎないとして、ほとんど文化人類学的な研究しかなされていないというのは、僕もどこかで読んだことがある」

 僕の話を聞いていたマリーは、いささか興奮気味に話し始めました。
「インディアン! ねえ、2人とも。この私達の大冒険旅行は、確かインディアンの聖地セドナ・ヴォルテックスから始まったわよね。そこで勧められて立ち寄ったブルー・ダイヤモンド・ヴォルテックスでも、先生をアメリカインディアンだと信じた保安官の奥さんにあの山向こうの秘密基地の存在をほのめかされたんだったわ。そして、危機一髪、何とかエリア51を覗いてきて、さあ帰ろうというときになって、またまた先生がものすごい話を聞いてしまった。しかも、やっぱりナバホ族やホピ族などのインディアンが絡んでいる。ひょっとして、さっきのガス・ステーションのお爺さんは、先生をインディアンの血を引く人間だと思って、あんなことを教えてくれたんじゃないかしら。ほら、最後に手を振ってくれながら、ナバホ族かホピ族に聞いてみろと言っていたじゃない!」

 マリーの言うことを理解したスコットにも興奮の火の粉が飛び移り、助手席からも感嘆の声が上がりました。
「そうだぜ、クニオ。あの親父さん、クニオのことをアメリカインディアンだと思ったんだ。だからナバホ族に聞いてみろなんて言ったんだよ! これはもう行くしかないね。そうだろ、マリー」
「そういうことよ。やっぱりこのままじゃあ何となく後味が悪いし、せっかく先生が教えてもらったものすごい話だって、このままじゃ誰にも知られず忘れてしまうだけだわ。ねえ、先生。スコットの言うとおり、ちょっと寄り道をしてアメリカインディアンにアナサジのことを聞きに行ってみません?」

 スコットもマリーも、もはや単に興味本位というわけではありません。私がガス・ステーションのお爺さんから聞いた話に、何か隠された真実の影を見出したのです。2人は真剣な眼差しで私の返答を待ちましたが、もちろん私に異存があるわけもありません。

「僕はかまわないが、スコット、君のスケジュールは平気なのかい? カリフォルニアの楽園に留まれる時間が少しばかり減ってしまうんじゃないかと思うが」
 スコットは間髪入れずに言い放ちます。
「今はカリフォルニアの楽園より、アメリカ中西部の砂漠地帯のほうがいいに決まっている。何と言っても、アナサジの手がかりがあるんだからね」
 3人の旅はもう少し長くなりそうです。私は座席の下から取り出した全米のロードマップをスコットに渡しました。
「オーケー、冒険好きのお2人さん。それでは、ナバホ・インディアンを探しに行くとしようじゃないか。スコット、ここから一番近いナバホ族の居留地を探し出してくれないか」

 私達の車は、もう遠くにラスベガスが見えるハイウェイに入っていました。スコットがしばしおしゃべりをやめて地図をにらんでいる間、マリーも黙ってしまったので私はミラー越しに後部座席を見やりました。するとマリーも後ろの席で何かを真剣に読みふけっているようです。
「何を見てるんだい、マリー?」
 すると、マリーは顔をあげ、少しおどけた様子でミラー越しに微笑みかけ、運転席と助手席の間に身を乗り出してきました。
「これ、キャンベルさんのエリア51リサーチセンターに置いてあったパンフレットです。ご自由にお取り下さいと書いてあったので取ってきたのを思い出して読んでいたの」
「そんなものがあったのか。あのゴミ屋敷からよく見つけたね。じゃあその本にはエリア51のことや、それに対する彼の運動なんかが紹介されているんだ?」
「そういうのもあるんでしょうけど、これは電子メールで配信される無料の機関誌の、プリントアウトみたい。タイトルは“グルーム・レイク・ラット・パトロール”。キャンベルさんって面白い人ね」
「ああ、それは随分昔に流行った戦争物のテレビドラマから名前を取ったんだ。砂漠の中をジープで走り回る勇敢な特殊部隊がラット・パトロールさ。それで、何か面白いことでも書いてあったのかい?」

画像1

キャンベルさんが発行しているインターネット・ニュースレター「グルーム・レイク・ラット・パトロール(Gloom Lake Desert Rat)」プリント版。

 私としては、マリーほどはその印刷物を面白がっていなかったのですが、砂漠を走り続ける車でそんなものを読みふけって、車酔いでもされてはかないません。少し気を逸らせようと水を向けただけでした。ところが、彼女の口をついて出てきたものは、意外な言葉だったのです。
「ええ、キングマンのUFO墜落現場のこと」
 キングマン、その単語にスコットも顔をあげました。
「キングマン?」
「そうよ、キングマン。覚えてる? ルート66で立ち寄ったレストランで、不意に声をかけてきた男の人が言っていたUFO墜落事件。その墜落現場を特定したという情報がキャンベルさんの所に持ち込まれた話が載っているの」「で、どこからの情報なんだい?」
「それが、ある信頼できる筋からの情報とだけしか書いてなくて……あ、待って。“しばらくはこの情報源については匿名扱いにするが、そう遠くない将来には明らかにする予定だ”とあるわ。あのキャンベルさんの人柄からして、これは信頼してもいいんじゃないかしら?」

 ロードマップを膝の上に置いたスコットは、私とマリーの顔を交互に眺め、少し呼吸を整えてから話し始めました。
「ちょうどいい。この地図によれば、ナバホ・インディアンの居留地は、アリゾナ州とニューメキシコ州を貫くルート66やフリーウェイ40号線の周りに点在している。だから、僕らもラスベガスから再びキングマンを目指し、フーバー・ダムを通ってとりあえずルート66に入っていかなければならない。ここはひとつ、そのキングマンのUFO墜落現場とやらを拝んでいこうじゃないか。その紙の束に、正確な場所の記述はあるかい、マリー?」

 再度キャンベルさんの機関紙に目を通した彼女が見つけ出した墜落現場は、不思議なことにちょうど何日か前にキングマンからフーバー・ダムを目指して走っているうちに知らない間にハイウェイ・パトロールにつけられていた場所から、舗装していない道をセルバット山のほうに入っていき、トレーラー・ハウスやキャンピング・カーが集まってできたドラン・スプリングスという小さな集落を過ぎて、道が舗装道路になった辺りの山側の斜面ということでした。

「あの警官にスピード違反を見逃してもらった所の近くだって!? クソッ、これはまたまた何かあるぞ、クニオ」
 スコットに言われるまでもなく、私自身も不思議な目に見えない糸で手繰り寄せられているような気にはなっていました。
「うん、セドナ・ヴォルテックスを見てから、何かインディアンの神様に操られて、普通の人では絶対に体験できないような冒険に巻き込まれてきたのかもしれない。しかも、これからナバホ族にアナサジのことを聞きにいこうというちょうどそのときに、途中に40年前のUFO墜落現場があることが分かった。しかも、その場所たるや、僕がずっと気になっていたハイウェイ・パトロールにつけられていたところの近くだったとはね。これで、何となくもやもやとしていたものが、少しずつでも晴れてくるかもしれない」

 タウンカーは、満面に真っ青な水を蓄えるミード湖を左に望み、フーバー・ダムの上を恐る恐る走り抜けて、あのどこまでも真っ直ぐなキングマンへのハイウェイを突き進み、まさに警官に停止させられた地点を過ぎた辺りにあったドラン・スプリングスへと続くダートロードに入っていったのです。

画像2

フーバー・ダムでせき止められたミード湖。

UFO墜落現場”売ります”

 砂漠の中にそそり立つセルバット山を回り込むようにして続くダートロードを走りながら、私とスコットはマリーの読み上げるキングマンのUFO墜落事件について耳を傾けていました。

「墜落したのは1953年の5月20日、午前3時頃。直径10メートルほどの円盤状飛行物体が墜落したが、軍隊は数日前からレーダーや目視でキングマン付近を飛び回るUFO(未確認飛行物体)を警戒していた。だから夜明け前に兵隊を墜落現場に急行させることができ、残骸やエイリアンをとりあえずキングマンの陸軍航空隊基地の中の格納庫に収容したとあるわ。この基地は、いまではキングマン空港になってしまったので、当時の格納庫などはなくなっているらしいけど。でも、墜落の原因や、エイリアンが生きていたのか死んでいたのか、あるいはその後UFOやエイリアンがどこに運ばれていったのかについては、何も書かれていないわね」
「当然、あのエリア51だろうな。軍隊の大型トラックでも6時間あれば着くだろう。しかし、何日か前から軍隊がUFOの飛行を警戒していたというのは変だな。あんなものは、突然に飛んできて、さっと行っちまうか、あるいは墜落するか、いずれにせよ今か今かと待ちかまえていられるようなものではないはずだろ? それが、何日かの間レーダーやら何やらで警戒できたというのは、あらかじめそのUFOがこのあたりを飛ぶことが分かっていたということじゃないか。ということは……」
 マリーが後を続けます。
「ということは、墜落したUFOというのは別にそのとき宇宙のどこかからフラフラと迷い込んできたのではなくて、軍隊の管理の下に何らかの目的があってこの辺を飛んでいた、ということね。故意にしろ偶然にしろ墜落してしまったけれど、軍隊が急行できたということは墜落現場も軍の支配下にある土地ということよ。しかも、あの山の向こうのエリア51にあるかもしれない、アナサジの地下施設に回収した可能性だってあるということは、アナサジと共同でUFOのような進んだ飛行物体の飛行実験をアメリカ軍がやっていた……そういうことよね、スコット!」
「大当たり! マリーも、クニオに鍛えられたおかげでだいぶ美人諜報部員の雰囲気が出てきたじゃないか」
 スコットのジョークに笑いながら、彼女はさらに続けました。
「ねえ、確か宇宙人の円盤が墜落したことですごく有名な街がアメリカにあったわよね?」
「ああ、ロズウェルだろ。ニューメキシコ州の南部にある小さな街で、もうメキシコとの国境は目と鼻の先といった田舎町だ。クニオは行ったことがあるかい?」
「いや、行ったことはないよ。行ったことのあるニューメキシコ州はアルバカーキくらいのものだね。あそこには飛行機で1度だけ行ったことがある。原子核物理や素粒子物理の国立研究所があるからね。ほら、原爆実験の研究が行われたところだよ。確か、アメリカで最初の原爆実験は、ネバダ砂漠ではなくてロズウェルの近くのホワイト・サンズ実験場だったはずだが」

画像3

アメリカ中西部の地図とスコットの引いた直線。

「そうだ、最初の原爆実験はあの辺りでやったんだった。まあ、原爆とUFOは関係ないだろうけどね。しかし、このアメリカ中西部のロードマップを見ていて気がついたんだが、あのブルー・ダイヤモンド・ヴォルテックスとロズウェルとを直線で結ぶと、キングマンの墜落現場も、セドナ・ヴォルテックスもぴったりその直線上にあるんだ。セドナのガイドが言っていたように、やっぱりUFOっていうのはヴォルテックスの近くを飛ぶんだろうか?」

 スコットが開いて見せてくれた地図で見る限り、確かに彼の指摘どおりのようです。私は運転をしているのでチラリと見やっただけでしたが、じっと見入っていたマリーが突然甲高い声を上げ、再びキャンベルさんのニュースレターをめくり始めました。
「えーっと、確かこの辺りにあったんだけど……ほら、ここにあるわ。ソコロ、ソコロっていうロズウェルの近くの街。これも、やっぱり直線上にあるじゃない!」
「いったいどうしたんだマリー。落ち着いて説明してくれよ」
 スコットがやや困惑気味に説明を求めると、しかしマリーは興奮冷めやらず早口でまくし立てます。
「さっき、これをパラパラとめくっていたときにちらっと目に止まったのよ、ソコロっていう街の名前が。そしたら、スコットが見せてくれた地図の、しかもブルー・ダイヤモンド・ヴォルテックスとロズウェルを結ぶ直線上にもソコロっていう名前があるじゃない。確かに同じ場所のことよ。ほら、サン・アントニオ平原の入り口ってあるし」
 ドラン・スプリングスの集落を通過してセルバット山の東側の斜面に出かかっていたタウンカーを運転している私に代わって、助手席のスコットがマリーから手渡されたロードマップをチェックしてくれました。
「おいクニオ、こいつはすごいぜ。確かに、ドンピシャ直線の上にある。おまけに、このソコロは原爆実験をやったホワイト・サンズ試験場のすぐそばの街だ。しかしマリー、いったいこのソコロっていう街が、どうしたと書いてあるんだい?」
「そう、それなのよ。キャンベルさんのニュースレターにはね、キングマンのUFO墜落現場のことだけでなく、その次の号にはソコロのUFO墜落現場についても記述があるの。さっきはキングマンの箇所を読むのに夢中で、まだその先にまで目が届かなかったんだけど、確かキャンベルさんのトレーラー・ハウスでこれを見つけたときにパラパラとめくって、そのときにソコロっていう名前が目に入っていたんだと思うわ」

 私は車をダートロードの路肩に止め、身体を後ろに向けてマリアンヌに聞いたのです。
「ちょっと待ってくれよ、そのソコロっていう街にもUFOが墜落したんだって?」
 スコットは私とマリーを交互に見ながら、マリーの言葉の続きを待ちます。
「ええ、何でもロズウェルに墜落したのが1947年のことで、ソコロに落ちたのは1964年のことらしいわ。えーっと、ほら、1964年4月24日よ。……フリーウェイ25号線でスピード違反した車を追っていたハイウェイ・パトロールが見つけたらしいわ。ここにUFO墜落現場への道筋まである」
「このキングマンに墜落したのが1953年だったから、それから10年くらい後のことか。しかし、発見者が警官となると、そのソコロの墜落の話は信憑性も高いわけだ。それで、墜落現場もはっきりしている……」
 スコットは地図を開き、私の言葉を遮ってマリーに問いかけたのです。
「で、その墜落現場への道順は?」
「じゃあ、これ読むわよ。えー、フリーウェイ25号線の147番出口を出て、州道1号線を南下して空港を過ぎてから最初の道を右折して、丘の上に向かってダートロードを走っていったところ……」
「なるほど、確かにこのキングマンの墜落現場の記述よりもはっきりしていて、その分だけいやに生々しいなあ。でも、ニューメキシコじゃあ、しかたがない。遠くの何とかよりも、近くの……何だっけ? まあ、いいや。とにかく、我々はこの幾分大雑把ではあるが、それでもキングマンのUFO墜落現場のすぐ近くにいるわけだから、ソコロやロズウェルは忘れて、目の前のお宝に集中しようじゃないか」
 私の言葉に頷いたスコットとマリーを確認して、私は再びタウンカーを走らせ始めたのです。

画像4

キングマン近郊の地図(UFO墜落現場を×で示してある)。

画像5

墜落現場からキングマンの街を望む。

 ドラン・スプリングスを出てだいぶ走ると、確かにダートロードは終わり、道の途中からアスファルト舗装が続くようになりました。

「先生、そろそろよ。この道が舗装してあるところから少しだけキングマンのほうに走った所の右側の山の斜面とあるわ」
 マリーに促された私は、まったく交通量のない舗装道路に沿って車をゆっくりと走らせ、助手席のスコットは注意深く山肌を見上げていました。左には、遠くにキングマンの街を見下ろすことができ、ここが裾野の広いセルバット山の南の中腹であることを再認識できたのです。
「クニオ、止めろ!」
 スコットの叫び声に、私は急ブレーキを踏みながらタウンカーを右の路肩に突っ込ませました。
「ここかい?」
 スコットは窓の外を見ながら答えました。
「ああ、多分。積極的な理由はないんだが……何となくここのような気がする。それに、他の丘や斜面には農家があったり牛が放牧されていたりだが、ほら、ここだけには何もない。きっと昔から敬遠されてきたんだ、この土地は」
「つまり、UFOが墜落した場所ってわけで、気味悪がられて残ってしまった……まあ、可能性はあるね」
 私も半分納得しながら窓越しに山肌を眺めていたとき、急にマリーが笑い始めました。
「ねえ、見て、2人とも。あそこの看板に書いてあるの、“For Sale”じゃあない?」
スコットと私が車から降りて近づいてみると、確かに「この土地売ります」と書かれた小さな看板があるではありませんか。
「本当だ。いまだにこの土地は敬遠されているのかなあ。やっぱり、ここに墜落したんだよ」
 スコットの言葉を聞きながら、このUFO墜落現場らしき丘を見回していた私の後ろから、まだ笑い続けているマリーが声をかけてきました。
「ねえ、先生。折角だから、ここに研究室を移したら? 買えない値段じゃないでしょう? ビジター・センターを建てて、ここが1953年のUFO墜落現場ですって、観光客相手に商売するのよ。私、受付嬢やってあげるわ」
 思わずスコットも私も吹き出し、この他愛もないジョークに、私達は笑い転げました。この3日間張り詰めていた重苦しい気分を吐き出すように、私達は笑い続け、ずいぶんリラックスできたのです。

「墜落現場って、エリア51に比べれば、ずうっと安全よね」

 せいせいしたという顔で笑いやんだマリーを先頭に、私達は久しぶりに笑顔で車に乗り込み、一路ルート66を目指したのです。

画像6

キングマンのUFO墜落現場。

 キングマンの街をかすめながらルート66に入っていく頃には、日も西に傾き始め、そろそろ泊まるところの心配をしなければならなくなりました。

「ところで、お2人さん。今日はエリア51を見たし、さっきはキングマンのUFO墜落現場も拝むことができた。ナバホ・インディアンの居留地まではまだだいぶあると思うんだが、どうだい今日はこの辺で早めに宿を見つけてゆっくりと休もうじゃないか。僕は昨晩僅かでも眠れたからいいが、君達は一睡もできなかったんじゃないか。それに、さっきの墜落現場で気も緩んだ。さっきから3人とも、あくびの連続だからね」

 時計を見るともう6時半をすぎていましたし、ここはネバダ州ではなくアリゾナ州。誰にも気兼ねなく、ステーキにワインで乾杯といきたいところです。もちろん2人にも異存はありません。私はちょうど前方に見えたVACANCYの明かりのあるモーテルの駐車場を目指して、勢いよくハンドルを切ったのです。

第8回「UFO墜落現場探訪記(2)」に続く

この続きをみるには

この続き: 0文字
この記事が含まれているマガジンを購読する
マニアックなロングインタビューや特異な筆者によるコラム、非公開のイベントレポートなど、本誌では掲載しにくいコンテンツを揃えていきます。ここで読んだ情報は、秘密結社のメンバーである皆様の胸に秘めておいてください……。毎月30~40本投稿あり。

ムー本誌の特集記事のほか、ここだけの特別企画やインタビュー記事、占いなどを限定公開。オカルト業界の最奥部で活動する執筆陣によるコラムマガジ…

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

ネットの海からあなたの端末へ「ムー」をお届け。フォローやマガジン購読、サポートで、より深い”ムー民”体験を!

あやしいもんじゃないよ👁
15
スーパーミステリー・マガジン「ムー」の公式サイトです。 ウェブマガジン「ムーCLUB」にて極秘情報を配信中。 本誌記事のほかウェブオリジナル企画にて、世界の謎と不思議をご案内します。

こちらでもピックアップされています

ウェブマガジン ムーCLUB
ウェブマガジン ムーCLUB
  • ¥900 / 月

ムー本誌の特集記事のほか、ここだけの特別企画やインタビュー記事、占いなどを限定公開。オカルト業界の最奥部で活動する執筆陣によるコラムマガジンです。なんだかんだ、毎月30~40本投稿あり。一部記事は全文公開します。