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昆虫”擬態”の驚異! 自然界に溶け込んだ虫たちの進化ミステリー/海野和男

他の生物や環境にそっくりな姿、その姿になる技術を獲得した昆虫たちがいる。「擬態」と呼ばれるこの能力は、どうして可能になったのだろうか?

文=久野友萬 写真=海野和男

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「自然のだまし絵 昆虫の擬態 進化が生んだ驚異の姿」
海野和男/誠文堂新光社
本体3000円+税
海野和男氏は、日本を代表する昆虫写真家として、世界的にも知られている。テレビ出演多数。日本自然科学写真協会会長、日本昆虫協会理事。
海野和男のデジタル昆虫記 https://www.goo.ne.jp/green/life/unno

昆虫の擬態は完成し、進化の袋小路にある

 木の葉にしか見えない蝶、花にしか見えないカマキリ、鳥の目の模様を持つ蛾……その姿はあまりにも奇妙だ。
 チャールズ・ダーウィンの進化論によれば、すべての種は自然淘汰と適者生存の繰り返しで生まれてきたもので、そこに神は介在していないという。だが、「擬態」と呼ばれるこれら昆虫の姿は、本当に進化論で説明がつくのだろうか?

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ヒシムネカレハカマキリ。まだ羽が生えそろっていない幼虫が、枯れ葉のつるにつかまっている。

 プロの昆虫写真家として、世界中の昆虫を撮影してきた海野和男氏はいう。
「植物に擬態する昆虫はすでに完成形です。逆にいえば進化の袋小路で、それ以上の進化はない」
 擬態にもさまざまなパターンがある。たとえばコノハムシという葉っぱそっくりの昆虫には、形は同じでも落ち葉や緑の葉、深い色の葉など模様にさまざまなバリエーションがある。
「住む場所によって、植物の模様は違います。昆虫も形は同じだけれど、植物に合わせていろいろな色や模様がある。ただ、どのパターンの昆虫も生き残っているので、生存率にあまり差はなかったんでしょうね」

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オオコノハムシ。マメ科の樹木にとまっている。葉の葉脈はもちろん、枯れ具合や虫食いの痕まで再現している。

昆虫のデザインは神の御業ではない

 模様のバリエーションは進化論の基本的な考え方、つまり環境に適応したものが生き延びるという適者生存に当てはまる。しかし、最初の葉っぱそっくりのデザインはどこから来たのか?
「昆虫の羽には網目状に植物の葉脈によく似た線が入っているんですね。それが都合よく、植物の葉脈に見えるんですよ」
 コノハムシは必ず背中側を下に腹側を上に向けて、枝からぶら下がるようにとまる。不思議に思った海野氏がよく観察すると、腹側から太陽光が当たると太い腹部が葉脈のように細く見える。羽の内側に光を反射する白い部分があり、反射した光で腹の影を消し、細く見せているのだ。
 はたしてこんなことが、自然淘汰で起こるのだろうか? つい神様がデザインしたといいたくなるが……。
「でも、これを神様のせいにしてはいけないんです」
 海野氏のもとへは、神様がすべてをデザインしたのだという証拠として使いたいと、キリスト教系のある新興宗教が擬態の写真を借りにきたこともあるそうだ。だが、それは違うのだと海野氏はいう。
 では、どう考えればいいのか? 海野氏が注目するのは、アルフレッド・ウォレスの進化論だ。

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カギシロスジアオシャク。冬場、幼虫は樹木の芽に擬態している。一瞥しただけでは、まずわからない。

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