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熱談!! 「68年革命」と新左翼系対抗文化から”大陸”的通俗オカルトの勃興へ/武田崇元・ムー前夜譚(1)

70年代の大衆的オカルトブーム最後の花火として1979年に打ち上げられた「ムー」。ではそもそも70年代に日本でオカルトがブームとなった背景は?
近代合理主義への対抗が精神世界という言葉以前の現実問題だった当時、世界の変革と理想を「不思議」に託してぶちあげた大人たちがいたーー。
ときには政治的にもなりえた熱きムーブメントを振り返る。(全4回予定)
語り手は、日本オカルト界の大御所・武田崇元氏!

構成=古川順弘

武田崇元

武田崇元(たけだ すうげん)
八幡書店社主、神道霊学研究家。伝説的オカルト誌『復刊地球ロマン』(1976~1977)の編集長として政治的ラデカリズムを媒介とする秘教的伝統の更新を企て、80年代のオカルトブームに決定的な影響を与える。『ムー』には創刊時から顧問として大きく関わり、みずから創業した八幡書店では『竹内文献』『東日流外三郡誌』などの超古代史文献や『大石凝霊学全集』など神道霊学文献を多数刊行する一方で、立体録音ホロフォニクスの紹介やブレインマシンの開発など電脳シャーマニズムの旗手として対抗文化全般に大きなインパクトを与えた。著書に『出口王仁三郎の霊界からの警告』『出口王仁三郎の大降臨』など。また最近は『子午線 原理・形態・批評』
VOL5に掲載のロングインタビューや、高橋洋監督の映画 『霊的ボリシェヴィキ』のタイトルの生みの親であることを通じ、再び注目を集めている。

1960年代にはまだ「オカルト」はなかった

 1960年代の日本には、そもそも「オカルト」という概念がまだありませんでした。「オカルト」ではなく「オカルティズム」という言葉はありましたが、それは主に澁澤龍彦や種村季弘などによって西欧の幻想文学や幻想美術が紹介されていく、そういう過程のなかで、その背景にあるヨーロッパの神秘主義、神秘思想に言及する場合の言葉でした。当時は隠秘主義という訳語もしばしば使われました。
 ただ神秘主義、神秘思想とはいっても、錬金術だとか黒魔術だとかパラケルススとか、薔薇十字団とかそういう古典的な題材が中心でした。ロシアの神秘主義者ブラヴァツキーやドイツの思想家ルドルフ・シュタイナーなど現代と踵を接する近代神秘学は対象外でした。錬金術にしてもフルカネリや生体内原子転換のケルブランなんてありませんでした。
 基調にあるのは幻想文学、耽美主義であり、そういったいわば美学的な趣向のなかでのオカルティズムです。ですから生々しいリアルな話、ガチなものは関心の対象外だったということです。しかし、それでも当時はすごく新鮮でむさぼるように読んだものです。
 60年代は、そういった限られた回路を通じてようやくオカルト的なるものの輪郭が見えてきた時代だったわけです。

 ですから、テンプル騎士団について知ったのはユイスマンの小説『大伽藍』を通じてです。桃源社という出版社があって1966年に『世界の異端文学』というシリーズが刊行されますがその中の1冊でした。
 タロットカードを知ったのも、アンドレ・ブルトンの『秘法十七番』を通じてです。ある日、本屋に行くと妙に惹かれるカバーの本があったのでその場で買いました。原題はArcane 17、つまりタロットの大アルカナの17番(星)という意味です。原書は1945年にニューヨークで刊行されていますから、その落差たるやなんと22年です。日本ではその頃になってようやくシュルレアリスムだとかアンドレ・ブルトンの本格的な紹介がはじまったわけです。
 ちなみに『アンドレ・ブルトン集成』が日本で刊行されたのは1970年です。それは澁澤龍彦による幻想文学や「オカルティズム」の紹介と軌を一にするもので、そういう「超現実」「幻想」に対する志向が60年代、70年代の対抗文化の基調でした。

 そういう志向は唐十郎とか寺山修司のいわゆるアングラ演劇や、土方巽や大野一雄、笠井叡(あきら)などの暗黒舞踏の勃興とリンクしていました。
 笠井叡は舞踏の基層とリアルな神秘学の関係を追究し1972年に『天使論』を著します。彼はおそらく最も早い段階で神秘趣味ではなく、神秘学と真摯に向き合った肉体芸術家です。
 幻想文学も最初は主に海外の紹介でしたが、やがて戦前の日本の伝奇小説の再評価へと向かいます。1969年には『夢野久作全集』が三一書房から出ます。三一書房が当時の新左翼系の出版社であったことは象徴的です。ちなみに当時は三一新書なんていうのがあって栗原登一(太田竜)の『世界革命』とか新左翼の本が新書でずらっと本屋に並んでました。
 対抗文化的なさまざまな動きは当時の急進的左翼運動の昂揚と気分的にリンクしていました。これは世界的な動きでした。

「想像力が権力を奪う」

 今、「68年革命」がエポックメイキングな「事件」として語られています。
 1968年5月にパリで学生や労働者の叛乱が起きて、日本をふくめ世界的にラディカルな反体制運動が巻き起こります。このなかで象徴的だったのは既存の共産党はそれを抑制し抑圧する側にまわったことです。
 それは既存のあらゆる権威の崩壊でした。
 パリの68年革命でカルチェラタン(大学街)を学生たちが占拠しますが、そのときの壁だか便所の落書きで有名になったのは「想像力が権力を奪う」という言葉です。
 この落書きは、今そこで起こっている事態は、硬直したマルクス主義をふくむあらゆる近代合理主義に対する明確な”ノン”であることを告げていたのです。
 ですから、70年代になると近代合理主義のもとで抑圧され、忘れ去られていたもの、周縁に追いやられていたものが次々と噴出していきます。
 そういう意味では日本の60年代のインテリの幻想趣味、超現実への志向と、70年代の大衆文化におけるオカルトの浮上は、レイヤーが異なるだけで、ひとつの大きな背景の中では一連の連続的なものだったとも言えるわけです。
 1976年創刊の『復刊地球ロマン』は1970年代の半ばにいわばそのレイヤーの統合を試みたわけです。

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復刊地球ロマン1目次

「復刊地球ロマン」創刊1号の表紙と目次。

60年代の『不思議な雑誌』という不思議な雑誌

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